1.まるわかり! 税務署の「組織と仕事」

  • 税務署はどんなところ?
  • 国税局はどんなところ?
  • 売上100億円超の法人調査は「料調一課」が担当
  • 売上が40、50億円の法人調査をする「料調二課」
  • 学校法人、宗教法人、公益法人等を担当する「料調三課」
  • 「文書回答事務」一切を引き受ける「審理課」
  • 資本金が1億円以上の法人の調査をする「調査部」
  • 「特別国税調査官」「統括国税調査官」が税務調査を実施

2.「申告書提出」から調査に「着手」するまで

3.税務調査の正しい受け方、上手な受け方

4.これがわかれば、法令は読める!

5.事例で読もう! 「税務調査」攻防戦

NEWS

12/6/13
書籍「社労士が見つけた!(本当は怖い)採用・労働契約の失敗事例55」6/13発売しました。
12/3/28
書籍「社労士が見つけた(本当は怖い)解雇・退職・休職実務の失敗事例55」3/28発売しました。
11/12/21
書籍「税理士が見つけた!(本当は怖い)事業承継の失敗事例33」12/21発売しました。
11/11/2
書籍「税理士が見つけた!(本当は怖い)飲食業経理の失敗事例55」11/2発売しました。
11/5/11
書籍「公認会計士が見つけた!(本当は怖い)グループ法人税務の失敗事例55」発売しました。

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同族会社のための税務調査

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5.事例で読もう! 「税務調査」攻防戦

ケース1 卸売業S社申告時に貸倒引当金の計上が過大に!

「別表の売掛金」と「貸借対照表の売掛金」がなぜか不一致
★法人プロフィール★
S社は、神奈川県に所在する金属材料の卸売業。売上金額が約10億円、所得金額は毎期数千万円を計上している同族会社である。売上先が多数に上り、売掛金の管理がむずかしく、未入金先もある。
★調査官の眼★
浅利上席と白魚調査官は鯖田社長から会社の概況の聞き取りをしたあと、帳簿調査に入りました。二人はそれぞれ分担を決めて、しばらく元帳や申告書を見ていましたが、白魚調査官が申告書に目を通していたときに、ある別表のある箇所に目がとまったのです。白魚調査官は、S社の顧問税理士である穴子先生に顔を向けると、「貸倒引当金の金額ですが、なにかおかしいと思いませんか。別表の売掛金の金額と貸借対照表の売掛金の金額が違っているんです。別表の売掛金の金額が貸借対照表の売掛金の金額より大きいですよ。もしかして、貸倒引当金が過大計上になっているのでは?」 と、疑問を投げかけたのでした。
★どこが問題?★
貸借対照表の売掛金の金額より、貸倒引当金の別表に記載された個別評価債権の売掛金の金額のほうが多いので、貸倒引当金の繰入額が過大となっているのではないか、という指摘である。 個別評価債権40,000千円に対し、20,000千円の貸倒引当金を計上していたが、反面調査の結果、個別評価債権は30,000千円であるから繰入限度額は15,000千円であり、差引き5,000千円が繰入過大となっている。修正申告する必要がある。
★調査の様子★
なぜ貸倒引当金の別表に記載された個別評価債権の売掛金の金額が貸借対照表の金額より多いのか、白魚調査官は、早速、社長や経理担当の奥様に説明を求めたのでした。社長は、次のように説明をはじめました。「実は白魚さん、ずうっと以前、あるお得意さんに品物を買ってもらったんです。ところが、その会社が行き詰ってしまいましてね。入金が途絶えがちになってしまいました。これじゃいけない、そう思って私は、先方の担当者に何度も入金のお願いをしました。でも、この不景気でしょ ? 取引先から値下げを求められて売上が下がり、うちに払うお金が用意できないと泣きつかれたんです。それでやむをえず、その当時、債権償却特別勘定を計上したのです。でも、相手も気にしてくれていたんでしょうね。売掛金の一部ではあるものの、その後、入金されたのです。うちの営業部は売掛台帳に入金処理したようなのですが、申告書を作成する担当者への連絡が徹底していませんでね。それが貸倒引当金の別表上の売掛金の金額が以前のままという、今回の状況を招いたんだと思います。どうもすいませんでした。」 社長の言いたいこともわかります。しかし、浅利上席は、次のような理由から修正申告してもらいたいと主張したのでした。「申告書の別表に記載している売掛金の金額が実際の売掛金額より多いんだから、正しい売掛金額を基準にして再計算するしかないと考えます。別表には個別評価債権として40,000千円記載し、その50%の20,000千円を貸倒引当金として計上していましたが、実際の個別評価債権金額は30,000千円であるから繰入限度額は15,000千円であり、差引き5,000千円が繰入過大となっているということです。5,000千円修正申告してください。」事実関係に加えて、法律的な根拠として次のような説明をしました。1 貸倒引当金は、法人税法第52条の規定に基づき、個別評価金銭債権の弁済の見込みがないと認められる部分の金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額に達するまでの金額しか損金算入は認められない。2 政令で定めるところとは、我々が調査したところによると、施行令96条1項第3号のホに規定されているイからニに準ずる事由、すなわち会社更生法や民事再生法、破産法等に基づく更生手続き開始の申し立てに準ずるものとして定められている事由、つまり法人税法施行規則25条の3に規定する手形取引停止処分に該当するため、当該個別評価金銭債権の百分の五十に相当する金額しか損金算入は認められない。よって5,000千円が過少申告となっていると判断したのでした。◎穴子先生の主張◎―― 取立て見込みのない金額は損金算入できる浅利上席の主張を聞いて、穴子先生は次のように答えました。「確かに、お得意さんからの入金が途絶えてしまった時は、当時認められていた債権償却特別勘定として債権金額40,000千円の50%を計上していました。毎期、洗替えで計上していました。その後、10,000千円が入金となりましたが、事務手続きの不備から個別評価債権金額を減額させずに入金前の金額40,000千円を基にして計算したため、損金の額に算入している金額が5,000千円過大になってしまっています。これについては、おっしゃるとおりです。しかし、浅利上席、私もいろいろ条文を見て考えたんですが、次の規定を適用すれば、損金算入が求められるのではないでしょうか。ご検討をお願いします。」穴子先生は条文の説明を始めました。1  法人税法施行令96条の1項二号を見ると、債務者が長期間債務超過であったり、事業に好転の見込みがなかったり、経済事情の急変などにより多大な損害が生じていたり、個別評価金銭債権の一部の金額につき取り立ての見込みがないなどの場合は、その金額を損金の額に算入できると書いています。うちの取引先は正にこれに該当しますと穴子先生は主張し、さらに ①この売掛金の発生は十数年前のものであること、 ②この取引先は完全に消滅したわけではなく細々と営業しているためなかなか貸倒損失としにくいこと、 ③しかしながら社長が高齢のため、事業が好転する見込みはないこと、 ④にもかかわらず自宅があるためまったく取り立ての見込みがないわけでもないこと、など、必要な補足説明を加えながら浅利上席に主張しました。2 その上で、確かに別表に記載した売掛金の金額は間違っていましたが、実際問題として別表に記載した貸倒引当金の金額を、取立て見込みのない金額と解釈して損金算入できると考えてもいいのではないか。こう主張をしたのです。
★結論★
穴子先生の説明を受けて、優しい浅利上席はその取引先に反面調査をした時にとても残金を支払えそうもないという感じをもっていたので、結果的に認めてくれました(浅利上席のつぶやき、興銀の貸倒れ事件のこともあるしなぁ。)一方、白魚調査官は、果たして穴子先生の主張をそのまま認めていいものやら、当然ながら不満そうな顔をしていました。穴子先生は何とかまとめましたが、皆さんならどうしますか。
★税務調査の公式★
1 むずかしい議論はともかく、まず申告書のチェックを確実に行う。
損益計算書、貸借対照表に記載された各勘定科目の数字と別表に記載された科目、数字を必ず一つずつ突合すること、申告書に添付する内訳明細書に記載している数字とも確実に突合し、間違いのないようにすることが必要です。こんな簡単なことが公式かと思われるかもしれませんが、小さな仕事を怠けず着実に行うことが結果として、税務調査の正しい受け方、上手な受け方につながります。むずかしいと思うことは、誰もが十分に注意しますが、こういう簡単なことはおろそかになるものです。この気の緩みから水が漏れていくものなので、ぜひ、この公式を心に留めておいてください。この事案も基本的なチェックをしておけばこんな問題にはなりませんでした。
2 必ず条文を見て、何かしらのヒントを探すこと。
この事案にかかわらず、一般的に言えることですが、当局の指摘に対して何となく漠然と考えていても、いい考えは何も浮かんできません。答えは自分の頭の中からではなく、条文の中から探しましょう。税務上のことは税法の条文に即して考えるということが必要です。条文の頭で考え、条文の言葉で話すということが必要になります。