ケース3 生鮮食料品店V社 社員教育費用の会社負担金は従業員への利益供与?

★法人プロフィール★
V社は生鮮食料品の販売会社である。東北地方一帯に数十店舗を有し、従業員も400名をゅうに超えている。ここまで成長できたのも、店長をはじめ中間管理職、一般の従業員まで、社員教育にくまなく力を注ぎ、つねにお客さまに喜ばれるサービスを心がけてきたからである。今回、税務調査で問題になっているのは、この社員教育費用についてである。

★調査富の眼★
浅利上席は会社の概況を開き終わると、どうして研修が必須教育研修と希望教育研修の2つに分かれているのか、それぞれの研修がどういう内容で実施されているのかなど、詳しく調べようと思いました。

★どこが問題?★
社員教育に力を入れているが、教育の内容によっては、教育費用の会社負担金が従業員に対する経済的利援の供与となることもあることから、源泉所得税の観点からの分析が必要である。

★調査の様子★
V社の太万魚部長は、研修規定、年間の計画表、社員へ周知する案内書などを示しながら、2人に説明しています。
その内容は、社員の各階層、たとえば平社員、主任、係長などの職務内容に応じた教育を外部機関の講習会を利用して実施していること、研修は大きく分けて2種類あり、実施する研修は約20科目にのぼること、などです。具体的に、
(1)このうち10科目は会社が各階層別の必須教育と位置づけるもので、公的資格またはこれに準ずる資格を取得するのが目的です。業務命令のため、すべて出勤扱いとなり、従業員は強制的に参加します。ただし、試験に不合格となった場合の受験料は、自己負担となります。
(2)残りの約10科目の研修は公的資格ではありませんが、情報セキュリティ検定や、ビジネススクール等が実施する中堅管理職育成セミナーなどで、これは必須教育ではなく、各階層別の社員が受講を希望する希望教育と位置づけられています。研修参加日は、出勤日ではなく有給休暇を利用することとなっており、試験に不合格となった場合の受験料は同様に自己負担とされています。
このような内容でした。

◎白魚調査官の主張◎
――――希望研修費用は、社員に対する給与だ。
教育担当部長の説明にじっと耳を傾けていた2人ですが、白魚調査官が口火を切りました。
「太刀魚部長、たしかに必須教育である研修費用は、社員に対する経済的利益にはならないでしょう。しかし、希望教育研修費用はどうなのでしょう?
私はこの研修費用は社員に対する経済的利益の供与に当たると思っているんです。よく考えてください。(1)の必須教育研修は、会杜の研修規定の中で、〈必須研修は店舗運営に直接必要であり、社員が一定の職域レベルに達したときに取得しておくべき内容〉と書かれています。研修を受講することが会社からのいわば強制であり、しかも、研修受講中は出勤扱いになっています。以上のことから業務に必要な研修であると判断できます。
(2)の希望教育研修は異なります。社員の受講希望による研修であり、強制参加ではありません。しかも有給休暇を取得して社員の自由意志で参加するようなものです。
会社自身も研修体系全体を、必須研修と希望研修とに区別して考えていますよね。
これは、必須研修は業務に必要な研修であり、希望研修は業務に必要な研修ではない、ということを自ら認めているということではないですか?
会社が自ら娘引きをしているこのような研修は業務に必要な研修とは認められません。
したがって、この研修にかかる費用は社員に対する経済的利益を供与したこととなりますから、源泉所得税が発生します。
さらに続けます。
受講希望研修は、社員が有給休暇を取って参加することとなっていますね。休暇を取るということは仕事をしていないということですよね。真に業務に必要であれば有給休暇を取得させ、希望者を募って参加させるということはないのではないでしょうか。
この点からいっても、希望研修に係る費用は、社員に対する経済的利益の供与に当たり、従って課税である、と考えざるを得ません。
白魚調査官から一方的にまくし立てられ、穴子先生と太刀魚部長は、反論もできず、黙り込んでしまいました。

◎浅利上席の主張◎
――――白魚、大丈夫かな。「源泉徴収のあらまし」を読んでるかな。
やり取りを黙って聞いていた浅利上席ですが、白魚調査官になにやら耳元でささやいています。穴子先生、聞き耳を立てています。
漏れ開こえてくる会話は次のような内容でした。
「おい、白魚、今のお前の考え方でいいのか、ちょっと違うんじゃないか。会社が必須研修と決めているから業務に必要で、必須研修と決めていないから業務に必要でない、ということじゃ、ないんじゃないの?
法律や通達には、そこの部分、なんと書いである?ちょっと調べてみたほうがいいな。」
浅利上席に考え方の甘さを指摘された白魚調査官、指先まで、真っ赤になってしまいました。

★結論★
白魚調査官に代わって、浅利上席が示唆したことは何なのか、ここで調べてみましょう。
法人が社員を教育するために負担する教育研修費等が、経済的利益の供与に当たるかどうか、法律の定めではどうなっているのでしょうか。
所得税法第九条(非課税所得)を見ると、

第九条 次に掲げる所得については、所得税を課さない。十四学資に充てるため給付される金品(給与その他対価
の性質を有するものを除く)

とされています。これを受けて所基通9-15には次のように規定されいます。

(使用人等に対し技術の習得等をさせるために支給する金品)
9‐15 使用者が自己の業務遂行上の必要に基づき、役員又は使用人に当該役員又は使用人としての職務に直接必要な技術若しくは知識を習得させ、又は免許若しくは資格を取得させるための研修会、講習会等の出席費用又は大学等における聴講費用に充てるものとして支給する金品については、これらの費用として適正なものに限り、課税しなくて差し支えない。

これを読むと、業務の遂行に必要かどうかを判断する基準は、
(1)仕事に直接必要な技術や知識を社員に習得させるための費用であること。
(2)仕事に直接必要な免許や資格を社員に習得させるための研修会や講習会などの出席費用であること。
(3)仕事に直接必要な分野の講義を社員に大学などで受けさせるための費用であること。
とされており、これに加えて費用が適正な金額であることとされています。
つまり、白魚調査官が主張するような、研修受講費がその研修受講社員に経済的利益を与えるものかどうかの判断基準は、
(1)その研修受講が会社からの強制によるものなのか、社員の希望によるものなのか、とか、
(2)その研修受講が出勤扱いになっているか、有給休暇を取得するものであるのか、とか、
はまったく関係ないということが分かると思います。
判断基準はその研修なり、講習なりが、
(1)「業務遂行上の必要に基づく」ものか否か
(2)「これらの費用として適正な」ものか否か
ということだけであり、この判断基準にしたがって判断すればよいこととなります。
この判断基準にしたがって、改めて研修内容と業務内容を精査したところ、業務遂行上の必要に基づくもので、なおかつ費用としても適正なものであることが判明しました。
白魚調査官は、法令通達の定めるところとはまったく異なる独自の判断基準を自分で作っていたことになります。
さすがは浅利上席、そこに気がついて白魚調査官を指導していたのでした。
今回は、穴子先生が反論する出番がありませんでした。

★税務調査の公式★
1 自分で判酷基準を作らない。判断基準はすべて条文の中にある。
2 虚心坦懐に法令通達を読むこと。先入観を持たないこと。

おススメ会社設立セット

  1. 店舗販売最安レベル9,800円!会社設立印鑑3点セット(柘植)

    ※通信販売は行っておりません。
  2. 会社設立センター・起業家応援パック

    会社設立・起業家応援パック(司法書士+税理士)まとめて頼む=とってもお得な起業家応援パッ...
  3. 会社設立ブランディングセット

    せっかく開業した貴方の法人、告知やご案内は、終了していますか??「会社設立ブラン...