ケース4 卸売業A社 少額減価償却資産の判断をどうするか

★法人プロフィール★
海外の有名ブランドのハンドパックやファッション小物の卸売業で、売上規模が年間50億円程度、所得金額が数千万円のイタリア資本の外資系の会社である。商品管理のために自社倉庫を所有し高級バッグや小物などを保管している。

★調査管の目★
浅利上席と白魚調査官は、倉庫内の在庫の確認調査をしました。
在庫については、特に問題はありません。しかし、気になることがあります。倉庫に最新式と思われる収納ラックと立派な監視カメラが設置されていることです。
白魚調査官は浅利上席に、「これらのラックと監視カメラは資産計上されていませんよね。問題ありませんか」と、小声でささやいたのです。
「問題ありそうだな」。そう浅利上席も、答えたのでした。
早速、イタリア人のベルサマーニ社長と日本人スタッフの黒鮪資材部長を呼んで、事実関係の調査に入ることとなりました。

★どこが問題?★
(1)自社で部品を購入し組み立てた倉庫内の監視カメラを一時の費用として損金参入していたこと
(2)その倉庫内に製品収納ラックを設置した費用を一時の費用として損金参入していたことが問題にされている。

★調査の様子★
黒鮪資材部長は、カワハギ経理部長を同席させたうえで、浅利上席たちに次のような説明を始めました。
「弊社は以前に比べて、商品の種類も数量もずいぶんと増加してきています。そこで製品収納用に倉庫を新たに建設し、防犯のために監視カメラを設置しました。ご覧のとおり、倉庫が広いのでl台28万円の高機能監視カメラを10台設置することになりました。ところが、それだけでは足りなかったので今期になってから、さらに6台購入し、追加して据付けました。
うちにはIT担当者がいるのですが、彼らがサーバー、カメラ、モニタ、ソフトなどを購入し、監視カメラ一式を組み立てました。
これに要した費用ですが、サーバーは、100万円を超えるため資産計上しています。そのほかは一時の損金として処理しています。
カメラ、モニター、ソフトについてですが、設置のための付随費用を含めてもl台あたり30万円未満です。そのため措置法にもとづく少額減価償却資産として一時の損金としています。
カメラなんですが、監視にだけ利用するのはもったいないと思い、テレビ会議用などにも使用できるものにしました。製品収納ラックは、l台10万円未満のものを30台連結して使用しています。」

◎浅利上席の主張◎
―――ー体的に使用している監視力メラは資産計上すべきである。
浅利上席が口を聞きました。
「(1)サーバー、モニター、カメラを監視カメラシステムとして一体的に使用しているなら、カメラの代金を一時の損金に算入することには、無理がありますね。
サーバー、カメラなどを別々に購入していたとしても、それらを組み合わせて、監視カメラシステムとして機能的に一体的に使用しているので、一時の費用として損金算入は認められません。調査対象期に取得したカメラ10台分、約280万円を当局としては否認します。(2)また、ラックについてですが、30台を一体のものとして機能させているので、少額減価償却資産とはなりません。l台当り8万円ですから、合計約240万円を否認します」と主張したのでした。
この主張に対して、ベルサマーニ社長はたどたどしい日本語ながら、猛然と反論を始めました。
浅利上席と白魚調査官はその剣幕にあっけに取られています。

◎ベルサマーニ社長の主張◎
――――少額減価償却資産は1単位の取引価格で判断するべきである。
「(1)カメラ本体は1台あたり12万円デース、事業の用に供するために直接要するソフトや付属品を加算しでも1台あたり30万円未満デース。
少額減価償却資産として判断するための基準としては、通常1単位として取引されるその単位、例えば、器具及び備品についてはl個、l組又はlそろいごとに判定することとされているのではアリマセンカ?
カメラに付属品を加算したものを取引される単イ立と考え、その金額が30万円未満のため、一時の費用と経理したものデース(措置法67の5①)。
(2)ラックについても通常の取引単位であるl台当たりの価格が10万円未満であることから、何十台連結しでも1台たりの価格で判断しなければナリマセン、合計額で判断するべきではアリマセンネ。」

ここで、少額減価償却資産について説明しましょう。
少額な減価償却資産であるかどうかの判断基準について、法人税法の基本通達は、以下のとおり示しています。
7‐1‐11 令第133条≪少額の減価償却資産の取得価額の損金算入≫又は令第133条の2≪一括償却資産の損金算入≫の規定を適用する場合において、取得価額が10万円未満又は20万円未満であるかどうかは、通常1単位として取引されるその単位、例えば、機械及び装置については1台又は1基ごとに、工具、器具及び備品については1個、1組又はlそろいごとに判定し、構築物のうち例えば枕木、電柱等単体では機能を発揮できないものについては の工事等ごとに判定する。

損金算入することができる取得価格かどうかの判定は、通常1単位として取引されるその単位ごとに判定することになっています。こうベルサマーニ社長は判断したのでした。

◎浅利上席の主張◎
――――機能的に一体として使われるもの拡資産計上すべき。
浅利上席も負けてはいません。
「機能的に一体として使われるものは、その一体化した状態をひとつのものと考えて、少額減価償却資産に該当するかどうかの判定対象とするべきでしょう。と主張してきたのです。つまり、サーバーとモニターの他、カメラ10台分も監視カメラシステムとして、資産計上するべきであるという主張です。
通達本文には「取引される単位」と書いてあるにもかかわらず、「機能的に一体のものを一つの判定単位」とするという主張です。
議論がぶつかり合ったのです。

◎穴子先生の主張◎
――――少額減価償却資産は通常取引される1単位の価額で判定する。
ここで穴子先生、おもむろに議論に割って入りました。
「基本通達に、機能的に一体として使用するものは一体で判定するべし、というような明文の規定があればまだしも、そのような規定はどこにもありません。
通常取引される単位の価額で判定すると、明文の規定で示されているのですから、その書いてあるとおりの基準で判定すればよいのではないでしょうか。」
と、穴子先生は市販されている減価償却に関する質疑応答事例集の話を始めました。
「ある市販本の製品ラックについての説明では、製品ラックは1台ずつでもラックとしての機能を有してはいるが、ボルトで長続させ、連結して機能的に一体として使用することが出来るところにその特徴があり、またその目的で設置しているのだから、全体を一組と見て、その総額で資産計上するかどうかの判定をするべきであると書いてあります。
ところが他の市販本ではラックは通常l台を一つの単位として取引されるものであるから数十台を連結して、一つのセットとして事業の用に供した場合でもl台当たりの本体価格で判定してよいと書いてあります。このように判断が分かれています。」

穴子先生、さらに続けます。

「資産を機能的に一体として使用するかどうかということを言えば、およそどこの会社の事務所でも工場でも、机、椅子、キャビネット、機械、器具備品等、互いに関係なく、脈絡なく使用されているものはなく、事務効率、作業効率を考え、能率が上がるよう、一体として機能的に使用されているのではないでしょうか。」
そして、最高裁の判例を紹介しました。
NTTドコモ事件(最高裁第三小法廷、H20.9.16確定)
PHSに接続のためのエントランス回線利用権は、通常エントランス回線l回線に係る権利一つを1単位として取引されている。エントランス回線が1回線あれば通話が可能で、あるということであるから、本件権利はエントランス回線1回線に係る権利一つで、通話機能を発揮することができ、収益の獲得に寄与するものということができる。
そうすると、エントランス回線1回線に係る権利一つをもって、一つの減価償却資産とみるのが相当で、あることとなるから、権利一つごとに取得価額が10万円未満のものであるかどうかを判断すべきである、と判示した。

この判例の言わんとするところは、
その資産一つで、その資産としての機能を発揮することができる単位を基準にその取得価額を判断し、その価額によって少額減価償却資産にあたるかどうかを判定するということのようです。

★結論★
監視カメラをこの判例に沿って考えてみると、どうなるでしょう。
この問題となっているカメラ台がカメラとしての機能を発揮する一つの減価償却資産で、あると見ることができるかどうかが判断の基準となると考えられます。黒鮪資材部長の説明によれば、この監視カメラはテレビ会議用のカメラとしても使えるとのことです。また当初設置の台数では足りなくて6台買い増しして取り付けています。このような状況から判断すると、この監視カメラはl台で、カメラとしての資産の機能を発揮することができると考えられます。
したがって、カメラl台を通常取引される単位として、判定対象としてよいということになります。
サーバ一等と一体のものとして、全体で資産計上するという必要はないということです。
ただし、監視カメラシステム一式300万円といったような価格で購入した場合については、サーバー、モニター、カメラ、ソフト等全体がひとつの取引単位と考えられますので、購入した減価償却資産として300万円で資産計上する必要があると考えられます。

★もうひとつの考え方★
今回の調査では、1台の監視カメラを一つの減価償却資産と見て、それが少額減価償却資産に当たるかどうかを判断する際の取得価額を、どのような取引単位を持って算定するか、ということが問題とされましたが、もし調査官が監視カメラシステムをG社自身が製作した減価償却資産と考え、その取得価額をどう算定するかという観点からアプローチしてきたら結論はどうなるでしょうか。
法令通達には何と書いているでしょうか。法人税法施行令第五十四条を見てみましょう。

(減価償却資産の取得価額)
第五十四条 減価償却資産の……取得価額は、……当該各号に定める金額とする。
ニ 自己の建設、製作又は製造(以下この項及び次項において「建設等」という。)に係る減価償却資産次に掲げる金額の合計額
イ 当該資産の建設等のために要した原材料費、労務費及び経費の額
ロ 当該資産を事業の用に供するために直接要した費用の額

監視カメラシステムを自己が製作したと考えれば、その製作のために要した原材料費、労務費、および経費の額の合計額が取得価額となりますので、サーバ一等すでに資産計上している金額に監視カメラ10台分の価額280万円を加算した価額を持って自己の製作にかかる減価償却資産とするべきではないか、カメラ10台分の金額を少額減価償却資産として一時の損金とすることはできないのではないか、という結論が導かれそうです。
ただ、サーバー、モニター、カメラ等を原材料といっていいかどうかについては「?」ですが……。
さらに、その後の事業年度で買い増しして取り付けたカメラ6台の取得価額をどう経理処理すればよいのでしょうか。
1台30万円未満であるにもかかわらず、資産計上した監視カメラシステムにその取得価額を加算するのでしょうか。
そもそも製作、製造したといえるかどうかも問題です。皆さんはどう思いますか。

★税務調査の公式★
通達に書いている取引単位という文言の意味合いは、判例に沿って考える。
その資産一つで、その資産としての機能を発揮することができる単位を基準にその取得価額を判断し、その価額によって少額減価償却資産にあたるかどうかを判定するということです。
しかし、これは非常に難しい判断を納税者に課すことになります。

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