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松浦綜合法律事務所

税務調査後に受けた処分に対する不服申立て手続はありますか?

税務調査が行われると、税務署長等により更正・決定などの課税処分等が行われます。この処分に不服がある場合には、税務署長等に対する再調査の請求又は国税不服審判所長に対する審査請求のいずれかを行うことができます。また、再審査の請求をした場合に結果に不服があれば、国税不服審判所長への審査請求ができます。これらの手続を経てもなお処分に不服がある場合には、処分の取消しを求める税務訴訟を提起することになります。

1.不服申立て手続の概要
法人税や所得税など税金に関して税務署長等が更正・決定等の処分をする場合、課税要件に該当する事実を認定する必要があります。課税庁の立場として課税の公平性を過度に重視するあまり、処分の前提となる課税要件に該当する事実の認定が不十分となる可能性があります。また、課税要件の法解釈について課税庁と納税義務者との間で見解が相違していることもあります。

このような場合に、納税義務者が処分の取消し等を求める手続が不服申立て手続です。不服申立て手続は、基本的に行政庁内で判断をすることになります。不服申立て手続の種類としては、処分を行った税務署長等に対する異議申立て手続としての再度の審査請求と、処分を行った税務署長等の上級庁である国税不服審判所長に対する審査請求の2種類があります。

もっとも、行政に対する不服申立て手続では判断をするのがその処分を管轄する行政庁なので恣意的な判断をされる懸念は存在します。そこで、行政に対する不服申立て手続を経てもなお処分に対して不服がある場合には、中立的立場である裁判所に対して当該処分の取消し等を求める訴訟を提起することができます。このような訴訟を税務訴訟と呼ぶことがあります。

税務訴訟を提起するためには、行政への不服申立て手続を経ていることが要件となっています。このため、課税庁からの処分に不服があるからといっていきなり訴訟を提起することはできず、まずは再度の調査請求や国税不服審判所長に対する審査請求を検討することになります。

2.行政に対する不服申立て手続
行政に対する不服申立て手続としては、前述のとおり再調査の請求及び国税不服審判所長に対する審査請求の2種類があります。

(1)税務署長等への再調査の請求
税務署長や国税局長等が行う更正・決定などの課税処分や差押えなどの滞納処分に不服がある場合には、当該処分をした税務署長等に対して再調査の請求をすることができます(国税通則法第75条第1項、第81条)。

再調査の請求を行う場合は、対象となる処分の通知を受けた日の翌日から起算して3か月以内に税務署長に対して再調査の請求書を提出する必要があります。再調査の請求書が提出されると請求内容の当否について審理が行われます。審理の中で納税義務者側は課税要件の法解釈や課税要件に該当する事実の認定などについて意見を陳述する機会を設けるよう申し出ることができます(国税通則法第84条第1項)。この申し出があった場合には、税務署長等は拒否することができません。

再調査の請求における審理の結果、請求に理由がないと判断された場合には、請求を棄却する決定が出ます(国税通則法第83条第2項)。一方、再調査の請求に理由があると判断された場合には、対象となる処分の全部又は一部を取り消す決定や処分を変更する決定が出されることになります(国税通則法第83条第3項)。

これらの決定は書面により行われ、必ず理由が付記されることになっています(国税通則法第84条第7項)。税務調査に基づく当初の処分においては処分の理由が開示されないため、再調査の請求をすることにより結果はどうであれ処分の理由を知ることができるメリットもあります。処分の理由が判明すれば、その後の国税不服審判所長への審査請求や税務訴訟における準備が可能となるためです。

なお、再調査の請求によって処分の内容が変更される場合においては、請求した納税義務者にとって不利益となる方向で変更することはできないとの制約があります(国税通則法第83条第3項ただし書き)。したがって、処分の理由開示を受けられることも考慮すると、税務署長等からの処分に不服がある場合に再調査の請求をすることにはそれなりの意味があります。

(2)国税不服審判所長への審査請求
税務署長等への処分に不服がある場合には、再調査の請求を経ているかを問わず国税不服審判所長への審査請求をすることができます。国税不服審判所は国税庁の機関の一つではありますが、納税義務者への処分等を実際に行う国税局や税務署とは分離された特別の機関として設置されています。東京に本部があるほか、全国に12の支部と7つの支所があります。

国税不服審判所長に対する審査請求では、国税不服審判所に所属する審判官が、裁判長のような第三者的立場で、審査請求をした納税義務者側と処分を行った税務署長等の双方から主張を聞き審理を行います。

再調査の請求を経ずに審査請求を行う場合には、元の処分があったことを知った日(処分にかかる通知を受けた場合には、その通知を受けた日)の翌日から起算して3か月以内に申立てをする必要があります(国税通則法第77条第1項)。

また、再調査の請求後に決定内容の不服があるとして国税不服審判所長へ審査請求をする場合には、再調査の請求に関する決定書の謄本の送達があった日の翌日から起算して1か月以内に申立てをする必要があります(国税通則法第77条第2項)。

審査請求の申立てを行う際には、審査請求書という書面を提出する必要があります。審査請求書を提出した後は、原則として書面による主張や反論が繰り返されることになります。ただ、口頭で説明した方が良い事項がある場合は口頭での意見陳述の申立てをすることができます。意見陳述の申立てがあった場合、審判官はこれを拒否することはできません。

こうして審理等が終了すると、審判官らの合議による議決に基づき、国税不服審判所長が裁決を行います(国税通則法第98条)。裁決は、通常であれば審査請求から1年程度でなされることが多いようです。

3.税務訴訟
再調査の請求及び国税不服審判所への審査請求は、あくまでも行政庁が判断をするものでした。これに対し、より中立的立場である裁判所の判断を求めるのが税務訴訟です。

国税庁の公表資料によれば税務訴訟が提起される件数はそれほど多くはなく、平成30年度は181件でした。平成21年以降でもっとも税務訴訟の件数が多かったのは平成23年の391件で、その後税務訴訟の件数は年々減少している状況です。

また、国側の敗訴割合は平成30年において3.4%です。平成21年以降でもっとも敗訴割合(一部敗訴及び全部敗訴)が高かったのは平成23年の13.4%です。したがって、税務訴訟を提起しても勝訴できることは少ないのが現状です。もっとも、国側の敗訴割合はゼロではないので、特に税額が大きい場合には税務訴訟が一つの選択肢になることはあるでしょう。

4.おわりに
再調査の請求や国税不服審判所への審査請求は、税理士が主体となって行われることが多いようです。弁護士の場合には、税理士登録をしているか又は一定の要件のもと国税局長に通知することで当該国税局長の管轄区域において税理士業務を行うことのできる通知弁護士のみが納税者の代理人として活動することができます。

他方、税務訴訟において納税者の代理人となることができるのは弁護士のみですが、税理士は補佐人としての立場で弁護士とともに法廷で陳述することができます。したがって、課税庁の処分を争いたい場合には税理士及び税務に詳しい弁護士の両方に相談しておく必要があるでしょう。

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