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税務調査の法的根拠は何ですか?

税務調査には、任意調査と査察調査と呼ばれる強制調査の2種類があります。一般的な税務調査は任意調査によるものです。任意調査の法的根拠は国税通則法上の質問検査権に求められます。質問検査に正当な理由なく応じない場合には罰則が科せられるため、この結果として任意調査であっても税務調査に応じる義務(受忍義務)があるとされています。

1.税務調査の目的
税務調査が行われるのは、法人税や所得税など納税義務者が所得や税額を自分で計算して納付するという申告納税方式の税金です。これに対し、固定資産税などのように市町村が税額を計算して納付を求める賦課課税方式の税金は税務調査の対象となりません。

申告納税方式の税金は、納税義務者が自分で税額を計算するという性質上、その計算に間違いがないかを課税庁が事後的に確認する必要が出てきます。この事後的な確認を目的として行われるのが税務調査ということになります。

2.税務調査の法的根拠
税務調査の法的根拠は国税通則法第74条の2です。同条においては、所得税、法人税、地方法人税及び消費税に関する調査について必要があるときは、以下の調査をすることができると定めています。

・質問をする
・帳簿書類その他の物件を検査する
・帳簿書類その他の物件の提示・提出を求める

これら課税庁による調査権限をまとめて質問検査権と呼びます。この質問検査権に基づいて行われる調査が税務調査です。このほか、相続税、酒税、たばこ税、航空機燃料税等に関しても同様の質問検査権が定められています(国税通則法第74条の3から同法第74条の6)。

なお、税務調査という言葉自体は法律上定められたものではありませんが、裁判例(広島地裁平成4年10月29日判決)において「課税標準等又は税額等を認定するに至る一連の判断過程の一切を意味し、課税庁の証拠資料の収集、要件事実の認定、租税法令の解釈適用を経て課税処分に至るまでの思考、判断を含む極めて包括的な概念」と定義されています。

課税庁は税務調査によって得られた証拠資料等に基づいて課税要件該当性に関する事実認定を行います。納税義務者の申告内容に誤りがないと判断する場合には、更正決定等をすべきと認められない旨の通知(是認通知)を行います(国税通則法第74条の11第1項)。他方、申告内容に誤りがあると判断する場合には、調査結果の説明や修正申告の勧奨等がなされます(国税通則法第74条の11第2項、同第3項)。この勧奨等に基づき、納税義務者が修正申告又は更正・決定等を行い終了となります。

3.税務調査に強制力はあるか
(1)強制調査となる査察調査
強制調査となる査察調査とは、国税庁や国税局の国税査察官による調査です。納税義務者は査察調査を拒否することができません。査察調査では、裁判所からの令状に基づく強制的な証拠物件の差押えや、強制的な調査が行われます。この調査に基づき検察官へ告発され、最終的には刑事事件として裁判所に起訴されることになります。

査察調査の対象となるのは大口かつ悪質な脱税行為です。平成18年度において、査察調査により有罪となったのは160件であり、脱税額の平均は約1億700万円、懲役刑の平均は約1年4月、罰金刑の平均は約2700万円とされています。

(2)一般的な税務調査は任意調査
税務調査は、基本的に任意調査です。つまり、あくまでも納税義務者の意思により税務署に協力しているという建前です。実際に国税庁も納税義務者の理解と協力に基づき、納税義務者の承諾を得て行う旨を明示しています。

しかし、任意調査といえども、正当な理由なく税務調査を拒否することはできません。納税義務者が税務調査を拒否した場合には罰則が科せられることとなっており、この結果として税務調査に応じる義務(受忍義務)があることとされています。

仮に、納税義務者が以下のような態様により税務調査を正当な理由なく拒否すると、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられることがあります(国税通則法第128条)。

・更正請求書に偽りの記載をして税務署に提出する
・調査官の質問に対して答弁しない
・調査官の質問に対して偽りの答弁をする
・調査官による検査、採取、移動の禁止又は封かんの実施を拒み、妨げ、又は忌避する
・調査官による物件の提示又は提出の要求を正当な理由なく応じず、又は偽りの記載・記録をした帳簿書類その他の物件を提示・提出する

(3)日程変更の可否
税務調査が行われる場合、原則として納税義務者に対して調査の開始日時・開始場所・調査対象税目・調査対象期間などについて事前通知がされます。ただし、事前通知を行うと正確な事実が把握できなくなったり、その他調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると課税庁が判断した場合には事前通知なしに税務調査が行われることがあります。もっとも、事前通知なく税務調査が行われるのはごく例外的な場合に限られます。

事前通知された調査の日程については、合理的な理由がある場合に変更を求めることができることとされています(国税通則法第74条の9第2項)。ここでいう日程変更を求める合理的理由としては以下のような事情が該当します。

・病気・怪我等による一時的な入院
・親族の葬儀等
・業務上やむを得ない事情

(4)私物の提出拒否
税務調査で調査官から代表者などが個人的に使用している預貯金通帳の提出を求められた場合に応じなければならないのかという問題があります。国税通則法第74条の2によれば、調査官が提出を求めることができるのは「事業に関する帳簿書類その他の物件」に限定されています。

したがって、預貯金通帳が個人用と事業用とに明確に分けられている場合には、個人用の預貯金通帳は事業に関連しないとして提出を拒否できると考えられています。ただし、法人税の調査において法人と代表者との間にお金の出し入れがあるような場合には、代表者の個人用の預貯金通帳について事業との関連性が認められ、提出を拒否できないことがあるため注意が必要です。

4.税務調査における税理士の立場
税務調査に対応するのは一次的には納税義務者ですが、税務代理を委任した税理士がいる場合にはその税理士に立ち合いを求めることができます。

上で説明したように、税務調査には受忍義務がありますが、個々の帳簿等の提出要請に対しては事業との関連性等を理由に提出を拒否できることがあります。税務調査の現場において、応じるべき要請とそうでないものを法律の規定に基づき瞬時に判断することは税務調査に慣れている税理士でなければ困難です。

また、調査官からの質問についても税理士であれば、質問の意図を的確にくみ取り差し支えのない回答をすることができますが、税務調査に慣れていない納税義務者本人が対応すると不用意な回答をしてあらぬ疑いを招く危険性もあります。

したがって、税務調査を受けた場合、納税義務者だけで対応することは現実的ではありません。

5.おわりに
法人でも個人事業主でも、事業をしている以上はいつ税務調査が来てもおかしくはありません。もっとも、税務調査に慣れている人はそう多くはありませんので対応を税理士に任せることが安心です。税理士にもある程度の専門分野がありますので、税務調査への立ち合いを税理士に依頼する予定がある場合には、税務調査について経験が豊富な税理士を探すことが大切です。

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